―新たな価値を生み出す―大企業を飛び出したゼロからの挑戦

「会計簿記」に導かれた運命の道
渡部さんは学生時代に経営者の支援を志したと伺いました。いつごろから、どのようなきっかけがあったのでしょうか?
小・中学校くらいからだったと思います。慎ましい家庭で育ったため、「経営者」という存在に憧れがありました。当時ニュースでビル・ゲイツさんがマイクロソフトを大きくしているのを見て、「すごい世界があるんだな」と感じたんです。
高校生の時には、公認会計士の資格を取って経営に携わりたいと決めました。
公認会計士にしたのは、実は受験勉強があまり得意ではなかったからなんです。
商業高校で学んだ「簿記」という科目だけは夢中になれたため、「会計の一点突破でこの道しかない」と感じ、公認会計士の資格取得を目指しました。
会計士に合格された方が受験勉強が得意ではないとは意外です!資格試験に向けて具体的にどのくらいの期間勉強されたのですか?
高校時代から専門学校時代にかけての約3年くらいでしょうか。高校卒業後は専門学校に進み、朝7時から夜9時まで勉強漬けの毎日で。正直、人と話すのにも緊張するくらい「社会から離れていた」感覚でしたね。
その努力の甲斐あって見事、20歳で公認会計士に合格されたのですね。専門学校卒業後、大学に編入されたのはなぜですか?
専門学校時代は勉強ばかりだったので、大学では経営を学びつつも楽しい学生生活を送りたいという思いが強かったです。久しぶりに多くの人と関わり、「ようやく社会に戻った」と感じられました。
「完成されすぎて面白くない」ゼロからつくる楽しさへ
大学卒業後は大手監査法人に入社されたと伺いました。公認会計士の資格を活かす上で、迷いのない選択だったのでしょうか?
はい、資格を活かすなら迷いのない選択でした。ますは大手で学ぼうという思いがありました。ただ、大手監査法人で監査する企業は、通信会社や化粧品会社、マスコミなど、すでに“成熟した大企業”ばかりで、正直「完成されすぎていて面白くない、歯車のような仕事」と感じてしまったんです。
それで次にスタートアップ企業に転職されたのですね。大手との違いは大きかったですか?
劇的に変わりました。先輩がCFOを務めていた上場準備のスタートアップに転職したのですが、入社初日に自分でパソコンを買いに行ってセットアップするような環境でしたね。
大手のように「与えられた環境で動く」のではなく、「ゼロから自分でつくる」経験は新鮮で、とても楽しかったことを覚えています。
そこでは2〜3年ほど働きました。会社は、大手上場企業に買収され、私もPMI(統合プロセス)に1年ほど携わりました。
会社の立ち上げから、成長、そして旅立つところまで全てを見守った経験は、今でも私の財産です。
その後はベンチャーキャピタルへ移られたそうですが、どのようなお仕事をされていたのですか?
ベンチャーキャピタルは、スタートアップに投資し、M&AやIPOによってリターンを得るビジネスです。スタートアップで得た0→1のノウハウを投資先の企業に展開していく中で、これまでの経験が繋がっていく感覚がありました。
一方で、担当企業が10〜15社と多く、1社に深くコミットできないことには課題も感じていました。
「1社にコミットし大きく伸ばしたい」思いがMABPで結実
そんなときにMABPの代表取締役副社長・松尾からの誘いがあったんですね。
はい、そうです。松尾とは大学の同級生で、お互いに「経営者になりたい」という思いを共有しており、大学時代からずっと仲が良かったんです。
MABPにジョインしたのは、松尾から相談に乗ってほしいと頼まれたのが始まりでした。MABP設立から約1年が経ち、社員が4人で売上も立ちそうになったタイミングで、松尾が、当時初対面の齋藤と一緒に「守りの部分を担ってほしい」と声をかけてくれたんです。
ベンチャーキャピタルでの課題感も抱えていた中で、MABPへの意思決定はスムーズでしたか?
はい、非常にスムーズでした。ベンチャーキャピタルで感じていた「一社に深く関われない」という課題に対して、MABPでは「1つの会社にコミットし大きく伸ばしたい」という私の思いと、松尾からの誘いがピタリとはまったんです。
CFOのとして組織づくりと「人の成長」に見出す喜び

現在CFOとしてご活躍されていますが、入社当初はそういった業務をされていたんですか?
私は、アドバイザーのように直接的な案件の担当はせず、財務・人事・法務・マーケティングなど、会社を裏側から支える業務をなんでもやっていましたね。
今もCFOとして表舞台に立つことは少ないですが、組織作りや採用、ファイナンス、新規事業支援など、会社に共通する仕組みを整える役割を担っています。
MABPで組織作りをサポートしてきて「やってて良かったな」と思う瞬間はありましたか?
事業が伸びていくこと自体も嬉しいですが、やはり「人の成長」を間近で見られることに喜びを感じます。
例えば、アルバイトから入ってきて「仕事にそこまで興味がない」と言っていた子が、主体的に仕事に取り組める制度設計に整えたことで、「仕事が楽しい」と言ってくれ、最終的には組織自体を引っ張っていってくれる存在になったんです。そんな姿を見た時が本当に嬉しいですね。
そうした成長を見られるのは大きなやりがいですね。社員と関わるうえでは、どんなことを意識していますか?
「仕事を楽しんでほしい」というのは常に意識しています。楽しめることが自身の成長機会に繋がると考えているので、主体的に働ける制度設計を心がけています。トップダウンではなく、一人ひとりの声を聞きながら、無駄だと感じたことは改善してもらい、皆の力でより良い会社にしていきたいですね。
渡部さんご自身が仕事をするうえではいかがですか?
最も大事にしているのは「利益を出す」ことですね。利益とは社会における価値を表すものであり、優秀な人材に報酬を払い、事業をさらに伸ばしていくためには不可欠だからです。私の業務で言うと、コストコントロールや費用対効果の見極めといった「守りの部分」で数字に貢献することを常に意識しています。
そのためには、スピード感を持って実行し、結果をしっかり求めるようにしています。「いかに最短距離で結果にたどり着くか」を自分自身が意識し、メンバーにも体現してもらうことも大事にしています。
まさに経営の根幹を支える視点ですね。M&Aアドバイザーという仕事については、渡部さんはどのような可能性や魅力を感じていますか?
公認会計士の私から見ても「奥が深く、専門性が高い仕事」だと感じています。株価算定から始まり、財務を読み解き、それを顧客に説明するスキル、契約書に関する法務知識、事業シナジーを語るビジネスセンス、そして何より「人生を預けてもらう人間力」が求められます。高いレベルの専門性と人間力が求められるからこそ、アドバイザーとして成功することは、自身の成長を求めることと同義だと考えています。
「100人で100事業」を行う夢へ
最後に、渡部さんがMABPをこれからどのような会社にしていきたいと考えているか教えてください。
「100人で100事業」を実現する会社にしたいです。これは齋藤や松尾の思いでもあり、私も強く共感しています。既存メンバーや新しい仲間と共に、一人ひとりが自分の得意分野を活かして事業を立ち上げ、責任を持って育てていけるような、大きなグループにしていきたいです。
「100人で100事業」の先に、渡部さんはどのような景色を描いていますか?
新しい事業が社会に根付くことで、新しい価値が生まれ、それが多くの人の可能性を広げ、世の中をより豊かにしていく。そんな瞬間に立ち会えることが何よりも楽しみなんです。100人がそれぞれ主体的に挑戦できる環境をつくることで、その喜びが広がり、会社全体としての可能性が何倍にも増していくことを期待しています。
