飽くなき挑戦と、本気の失敗を資産に変える

飽くなき挑戦と、本気の失敗を資産に変える

横浜DeNAベイスターズ
投手
藤浪 晋太郎氏

過酷な環境が育んだ、揺るがない原点

まず野球を始めたきっかけを教えてください。

父が野球をやっていたので、家の前でプラスチックバットで遊んでもらっていたのがきっかけです。小学校1年生で野球チームに入りましたが、最初から夢中でしたね。今でもその「楽しい」という気持ちを持ち続けてプレーしています。


小学校卒業時で180cm、中学卒業時には195cmもあったそうですね。恵まれた体格をもってしてもやはり大阪桐蔭高校時代には苦労もありましたか?

高校の3年間は、携帯電話は持てず、私服すら持っていない。寮に入る時に「私服はいらないです」と言われました。「ジーンズとか外に出ることがないのでいらないです」と言われたんですよ。実際に、高校生活は寮と校舎とグラウンドの3か所の往復だけ。コンビニでお菓子を買えるのも月に一度、500円までという徹底ぶりでした。
寮では洗濯や食事の配膳もすべて自分たちで行います。中学まで当たり前に親がしてくれていたことの大きさに気づき、思い出しては泣きながら感謝していました。


そうした厳しい環境でも折れずにいられた理由は何でしたか?

シンプルに、「もっとうまくなりたい」「プロになりたい」「甲子園で勝ちたい」という思いです。そしてもう一つは、西谷監督の存在ですね。日々の何気ない練習にも「甲子園で勝つために」と意味を持たせてくれる方でした。だからこそ、当時は「どうすれば野球が上手くなれるか」という一点だけに集中していましたね。掃除一つでも手を抜けばプレーに出るんじゃないか、と。本気でそう思って、すべてを野球につなげて行動していたんです。その純粋な探求心が、今の自分のベースになっています。

挫折の淵で学んだ「コントロールできること」への集中

プロ入り後、ルーキーから3年連続の2桁勝利。振り返ってみて、当時の成功の要因は何だったと思われますか?

振り返ると、「運が良かった」というのが正直なところです。当時はルーキーでも1軍で起用されやすい環境がありましたし、ベテラン捕手や中継ぎ陣にも支えられていました。もちろん自分なりに努力はしていましたが、それだけで勝てるほど甘い世界ではありません。環境やタイミング、周囲の存在も含めて、すべてがかみ合った結果だったと思います。


その後、2017年頃からは苦しい時期も経験されました。精神的にもかなり追い詰められたと伺っています。

2017年あたりからは、物事がうまく回らなくなりました。自律神経失調症に近い状態になり、10円ハゲができたり、周囲の目がすべて敵のように感じられたりすることもありました。何をしていても「怒られるんじゃないか」と怯えながら過ごしていたと思います。
それでも踏みとどまれたのは、「野球が好きだ」という原点でした。もう一度、あの大歓声の中で投げたい。その思いだけが、自分をつなぎ止めてくれました。


苦しさが続いた時期にあえてMLBへ挑戦されました。その決断に怖さはなかったのでしょうか?

もちろん不安はありました。英語も喋れませんし、環境もわからない。ただ、怖いからこそ、あえてそういう環境に飛び込むことで、新しい経験を得られると考えるようにしています。
第一線で活躍されている方々から「挑戦できるなら絶対に行ったほうがいい」と背中を押していただいたことも大きかったですね。「無理かもしれない」という気持ちが、「それでも挑戦しよう」に変わった。そこで、球団に「メジャー契約を取れるチャンスがあったらアメリカに行かせてもらえますか」という話をさせてもらって覚悟を持ってシーズンに臨みました。


MLBではどんな学びがありましたか?

一番大きかったのは、「割り切り方」です。日本だったらアンラッキーなヒットにも理由を探しがちですが、アメリカだとそういう打球は統計上アウトとして計算されます。つまり、自分がコントロールできることと、できないことを明確に切り分けて考えるんです。日本人は真面目なので結果に対して原因を求めすぎる。でも本来重要なのは、「自分がやるべきことを100%やり切れたかどうか」です。その合理的な思考を、MLBで学びました。


その合理性が、現在の横浜DeNAベイスターズでのプレーにも繋がっているのですね。

DeNAはデータ活用に非常に長けていて、スタッフの理解度も高い。IT企業を母体とするカルチャーが色濃く反映されていると感じます。
入団の際も、プレーだけでなくパーソナリティまで含めて非常に詳細に分析・評価していただきました。その熱意ある向き合い方に強い信頼を感じたことが、日本復帰を決めた大きな理由です。

「本気の失敗」こそが本物の成功を創る

「本気の失敗」こそが本物の成功を創る
藤浪選手がモチベーション維持で大切にしていることは何ですか?

「野球人生の終わりを意識する」ことです。誰でも気が乗らない日や、やりたくない瞬間はあると思います。でも、終わりは突然来るかもしれない。だからこそ、後悔しないように「今」を一生懸命やる。その感覚が、自分を支えてくれています。


今後の目標について教えてください。

もう一度、メジャーリーグでプレーしたい思いもありますが、それよりも今年はチームで優勝したい。まだビールかけを経験したことがないので、チームメイトと一緒に味わいたいですね。


最後に、困難に直面しながらも挑戦を続ける経営者やリーダーへメッセージをお願いします。

成功の秘訣は、「本気で失敗しまくること」だと思います。本気の失敗には価値がある。本気で取り組んだ末の失敗には、次の成功につながる膨大なサンプル、つまりエビデンスが詰まっています。
一発でたまたま成功するよりも、失敗を積み重ねてそのメカニズムを理解したうえでの成功の方が、圧倒的に価値があり、再現性も高い。私自身、多くの「本気の失敗」を経験してきたからこそ、もう一花も二花も咲かせられると信じていますし、自分に期待しています。皆さんも失敗を恐れず、本気で挑んでほしいですね。

COMPANY INFO会社情報

企業名
横浜DeNAベイスターズ
所在地
〒231-0015 横浜市中区尾上町1丁目8番地 関内新井ビル 7階
事業内容
横浜DeNAベイスターズのチーム運営、ブランド PR 事業
ホームページ
https://www.baystars.co.jp/