金メダルを引き寄せた「日々の自己ベスト」の積み重ね

金メダルを引き寄せた「日々の自己ベスト」の積み重ね

株式会社 IMPRINT
リオ五輪・競泳金メダリスト
萩野 公介氏

【原点】「もっと速く」先輩の背中を追い、ひたすら泳ぎ続けた日々

【原点】「もっと速く」先輩の背中を追い、ひたすら泳ぎ続けた日々

萩野さんの水泳の原点について教えてください。

生後6か月から水泳を始めたので「生活の一部」という感覚が非常に強かったです。気づいた時にはバタフライも泳げるようになっていましたね(笑)

学童新記録更新なども達成していたんですけど、常に自分よりも速い中高生の先輩たちが近くにいたので、彼らみたいにもっと速くなりたいという思いのほうが強くて、ひたすら練習していました。


学生時代から日々の練習で意識していたことはありますか?

水泳の練習は25mプールの往復を毎日2時間ほど繰り返すなど、どうしても同じことの繰り返しというか、単調になってしまいます。

だからこそ「自分なりの目標を決めること」は意識していました。コーチから提示されたタイムをただこなすのではなく、自分の状態や体調などに合わせて日々目標を決めて、それを確実に達成するというルーティンは当時から癖づいていたと思います。


一方で、練習に身が入らないときにはどうしていましたか?

僕自身、どうしても水泳の練習に気持ちが入らない日や、自己ベストが更新できず苦しい時期がありました。ジュニアの選手からもよくその質問をされるのですが、「違う方向性に自分の努力を向けよう」と伝えています。

僕の水泳の恩師から「水泳を水泳だけで解決するのには限界がある」と言われていたのが印象に残っていて、練習に身が入らない時は無理に水泳を頑張るのではなく、家に帰って宿題を人一倍頑張ったり、美術館へ行って刺激を受けたりして、自分自身を腐らせないように別の方向へ努力を向けようという風に考えるんです。


それは自分の持っている「頑張る力」を無駄にしないためですか?

そうですね。自分の中に「頑張りたい」というエネルギーがあるのに、水泳がうまくいかないからといってそれを余らせてしまうのはもったいない。

一見、水泳と関係の無いようなことでも、結局は「人間」が泳いでいる以上、人間としての成長につながると考えています。僕の場合は本を読んだり、高校生のときには趣味の競馬を見たりしてリフレッシュもしていました。それらも全て「自分自身を腐らせないため」に何かにエネルギーを向けて、自分の持っているエネルギーを使い切るというルーティンの一部でした。

「気づけばそこにいた」――日々の自己ベスト更新が導いたオリンピックへの道

「気づけばそこにいた」――日々の自己ベスト更新が導いたオリンピックへの道
©TAKAO FUJITA

五輪を意識し始めたのはいつ頃ですか?

最初から「五輪選手になる」と決めていたわけではなく、日々の自己ベスト更新を大事にしてきた結果、気づいたらオリンピックを目指せる実力がついていたという感覚です。


プレッシャーや不安とはどう向き合っていましたか?

僕の場合は、周りからのプレッシャーを正直あんまり感じたことがなくて、どちらかというと自分自身に対する期待のほうが強かったです。

ジュニア時代から、大会で優勝すると「良かったじゃん!おめでとう!」と周りが言ってくれても「ベストタイムじゃないから」と自分は満足していないときがありました。これは自分の性格的なところですが、常に自分を厳しく見ていたことが苦しくもあり、練習に打ち込む原動力にもなっていました。


そんな並々ならぬ努力の末、2016年のリオ五輪で金メダルを獲得されました。どのような心境でしたか?

一番は、指導していただいたコーチに結果で恩返しをしたいという思いでした。自分のためだけなら心が折れていたかもしれませんが、「コーチに情けない結果は見せられない」という軸があったからこそ、最後までブレずに泳ぎ切ることができましたし、メダルをかけさせてあげられた時は本当に安心しました。自分一人では金メダルは取れなかったと思います。

五輪金メダル獲得後の苦悩、そして競技人生の「意味」を探す旅

五輪金メダル獲得後の苦悩、そして競技人生の「意味」を探す旅
©TAKAO FUJITA

五輪で金メダル獲得後のマインドセット、モチベーション維持はどのようにされていましたか?

リオ五輪の後は東京五輪というのが決まっていたので「母国開催の五輪に出場して金メダルを目指したい」という気持ちがあり一生懸命に練習に打ち込んでいました。

ただ、リオ五輪後に肘の手術をして身体的な変化もあり、なかなか練習に身が入らなかったり、自分の納得できる泳ぎができなかったりして、本来好きだった水泳があまり好きでなくなってしまって…自分にとっては非常に苦しい時期でした。


水泳との向き合い方も変わっていったのでしょうか?

自分が思い描くような結果が出ない中で、自分が泳ぎ続ける意味をすごく考えるようになりました。生後6か月から水の中にいて、自分の意思とは関係なく始まった競技人生なので「なんで自分は泳いでいるんだろう?」とその意味を見つけるために泳ぎ続けました。


そうした葛藤の時期を経て、2021年引退を決断された背景について教えてください。

「東京五輪で引退する」と決めていたわけではないのですが、東京五輪の予選レース前に、ふと「これが最後のレースになるかも」と思った瞬間に、走馬灯のように過去の記憶が蘇ってきたんです。

初めて日本代表になった時の記憶や初めての海外遠征の思い出、あんなレースをしたな、こんな友達ができたなって、嬉しい経験も悔しい経験も…


その記憶が、自分が泳ぐ意味の「答え」につながったのですか?

「自分にしかできなかったこれらの経験を、自分の人生として味わうために泳いできたんだ」と思いました。「人は経験するために泳ぐんだ」という自分なりの答えが見つかった瞬間、感謝の気持ちで自然と涙があふれてきて、すっきりした気持ちで最後のレースに臨むことができました。

萩野公介の現在と未来

萩野公介の現在と未来
現役引退から4年余り、現在はどのような活動に取り組んでいますか?

現在は日本体育大学の大学院で博士課程に在籍し、「人はなぜ泳ぎ続けるのか」を研究しています。僕自身の答えは見つかりましたが、人それぞれ答えは違うと思っているので、一人一人の価値観や思いに触れながら研究しています。

また、現役引退後は外からスポーツを見るようになって、言語を介さず人の心に訴えかけるスポーツの力を改めて感じています。僕自身スポーツ観戦が大好きなので、引き続き色んな形でスポーツに携わっていきたいですね。


最後に、困難な状況でも挑戦し続けるビジネスリーダーの方々へメッセージをお願いします。

「目標」と「目的」を使い分けることが大切だと思っています。僕の場合、目標は「金メダル」や「ベスト更新」でしたが、目的は「水泳を通じて素敵な人間になること」でした。

それらがブレなければどんなに苦しい時でも粘り強く歩み続けられます。基本的には「毎日真面目にやらなければ人間として輝けない」と思っているので、粘り強く日々の課題に向き合っていただければと思います。

COMPANY INFO会社情報

企業名
株式会社 IMPRINT
所在地
〒150-0033 東京都渋谷区猿楽町 3-7 代官山木下ビル
事業内容
アスリートマネージメント事業、ブランド PR 事業
ホームページ
https://www.imprint.jp/