「あの時こうしておけば」をゼロに 予防医療が当たり前の社会を目指して

「あの時こうしておけば」をゼロに 予防医療が当たり前の社会を目指して

株式会社ウェルネス
代表取締役
中田 航太郎氏

医師を志した原点と予防医療を見据えた救急総合診療科への逆算思考

中田さんが医師を志したきっかけを教えてください。

私は0歳の時に父の仕事の関係でアメリカへ渡り、4歳で日本に帰国しました。帰国後、環境の変化からか喘息を発症して入院したことが医師を目指したきっかけです。

担当の先生が安心感を与えてくれるだけでなく話も面白くて、当時の私は学校の先生と話すよりも病院の先生と話している時間の方がずっと好きだったんです。子どもながらに「お医者さんって面白いな、すごいな」と感じて、その頃からずっと「将来は医者になる」と周囲に宣言していました。


医師免許を取得し、救急総合診療科に進まれたのはなぜでしょうか?

一言で言えば、学生時代から興味があった「予防医療」を逆算して考えた結果です。

大学5年生の時、心筋梗塞で運ばれてきた患者さんがいたんですが、実は数か月前から症状があり数年前から健診でも指摘されていたにもかかわらず、手遅れに近い状態で運ばれてくる姿を目の当たりにしました。「事件は病院の外で起きている」と痛感し、なぜ手遅れになるまで病院に来ないのか、その実態を知るために救急の現場を選びました。

また、特定の部位だけでなく患者さんの人生や全体像にも向き合う「ジェネラリスト」でありたいという思いもあり救急総合診療の道へ進みました。

医師から経営者へ 末期がんの患者との出会いから生まれた起業の決意

その後どのような経緯で起業という道へ進んだのでしょうか?

きっかけはある患者さんとの出会いです。企業創設者だった男性患者さんが末期がんの状態で私の元へ運ばれてきましたが、彼は非常に医者嫌いな方でした。しかし、対話を重ねる中で信頼関係を築くことができ、彼から「君のような医者に健康なうちに会えていたら、あと10年、20年生きられたかもしれない」という言葉をもらいました。

その時、「調子が悪くなるまで医者と深く関わることがない」という現状を変え、健康な時から一緒に人生を考えてくれる「パーソナルドクター」という存在が必要だと確信し、起業に至りました。


医師から経営者へと立場が変わる中で難しかったことはありましたか?

2018年に起業しましたが、当初は「すべての人を助けたい」という思いが強すぎてビジネスにおけるターゲット設定が曖昧でした。万人が「いいね」と言ってくれるけれど、実際には誰も買わないようなサービスを作ってしまった時期もあります。そこから「誰にリソースを集中すべきか」を考え抜き、2021年に「経営者向け」というポジショニングを明確にしたことでサービスが本格的に軌道に乗りました。

病気の「検査」から健康を最大化する「戦略」へ 予防医療サービスの真価

病気の「検査」から健康を最大化する「戦略」へ 予防医療サービスの真価
予防医療サービス「Wellness Membership」の概要と既存の人間ドックとの違いを教えてください。

「Wellness」は月額5万5000円サブスクリプション型で提供される会員制の健康管理サービスです。年2回のオーダーメイド人間ドックや年4回のドクターとの面談を軸に、365日いつでも可能なチャット相談など包括的なサポートを提供しています。

既存の人間ドックとの決定的な違いは、「病気を見つけるための検査」ではなく「健康な期間を最大化するための戦略」である点です。例えば、「Wellness」では通常の3〜4倍のデータを収集し、現時点では異常なしとされる数値でも将来の病気リスクを予測して、日常生活のPDCAを最適化します。


AIやアプリだけの管理では決して到達できない、人間である医師にしかできない価値とは何だとお考えですか?

AIは「正しい答え」を出すのは得意ですが、人間には「問いを立てること」「意思決定をすること」「感情を動かすこと」という3つの重要な役割があります。

例えば、AIはデータからリスクを算出できますが、その方の家族構成や会社の状況、人生のストーリーに照らし合わせて「なぜいま改善が必要なのか」をモチベートすることは人間にしかできません。ロジックだけでは動かない人間の感情に寄り添い、忙しい日常の中での「納得感のある意思決定」を支えることが私たちの価値だと考えています。


2025年9月にオープンした「Wellness Dr.’s Office」開設の狙いは何だったのでしょうか?

デジタル化が進むほどリアルな場の価値が高まると考えています。狙いは大きく3つあります。

1つ目は、健康への投資を惜しまない1000人以上の会員様同士が繋がるコミュニティを作ること。2つ目は、医師と対面で会うことで信頼関係を深めること。そして3つ目は、今後展開予定のフィットネスなどのコンテンツを提供するテストフィールドとしての役割です。

また、施設内の設計にもこだわっており、一般的な診察室のような「医師と患者」が向き合うスタイルではなく横並びで同じ方向を向いて対話するスタイルを採用しています。これにより、共に健康を創る「パートナー」としての関係性がより強固になっています。会員様同士の交流から新しいビジネスが生まれるといった無形資産としての価値も高まっています。

健康は数億円の価値を生む「経営インフラ」

健康は数億円の価値を生む「経営インフラ」
健康は数億円の価値を生む「経営インフラ」
多忙を極める経営者が自身の健康に投資をすることは事業にどう直結しますか?

1つ目は、BCP(事業継続計画)としてのリスク管理です。 社長の突然の病気や不在は、企業の意思決定をすべて停止させてしまう「最大の経営リスク」に他なりません。健康管理を徹底することは、この致命的なリスクを回避するための「最大の災害対策」となります。

2つ目は、パフォーマンスの向上による事業価値の最大化です。 自身の生産性や意思決定の質を1〜2%改善し、アイデアが出やすい「脳のインフラ」を整えることは、長期的に数億、数百億円の事業インパクトに繋がります。脳と体が健康な状態でフラットに考えられてこそ、10年、20年先、あるいは自分が死んだ後の世界まで見据えた健全な意思決定が可能になるのです。


中田さんご自身が実践している毎日の体調管理ルーティンを教えてください。

第一に睡眠時間は絶対に削りません。毎日7〜8時間は確保します。睡眠不足での意思決定は、酒を飲みながら仕事をしているのと変わらないほど質が落ちるからです。

運動に関しては隙間時間があれば必ず歩くようにしています。食事も単なるカロリー制限ではなく、定期的に取る自分の血液データに基づき、コレステロールや血糖値の状態に合わせて「いまの自分に最適な戦略」を立てて調整しています。


メンタルのコンディションを整えるための「マインドリセット術」はありますか?

学生時代から10年以上続けている「マインドフルネス(瞑想)」です。ポイントは、事実と自分の解釈を切り分ける訓練をすることです。 呼吸に意識を向け、雑念が浮かんだら「いま別のことを考えたな」と気づいて戻す。これを1日15分ほど実践するだけで集中力が上がり、感情を客観的に見られるようになります。

予防医療を当たり前のインフラへ

中田さんが成し遂げたい展望をお聞かせください。

まずは「起業したら、医師、弁護士、税理士を探す」のが当たり前になるようなインフラを作りたいと考えています。パーソナルドクターを持つことがビジネスリーダーのスタンダードになる社会です。

将来的には、会員様のデータを活用して誰もが最適なフィードバックを受けられるAIドクターのような仕組みも構築したいと考えています。最終的な目標は、すべての人が「やりきった」と後悔なく人生を締めくくれる社会を実現することです。そのための伴走者としてこれからも挑戦を続けていきます。

COMPANY INFO会社情報

企業名
株式会社ウェルネス
代表者
中田 航太郎
所在地
東京都千代田区内神田2-4-6 WTC内神田ビル7階-8階
設立
2018年06月
事業内容
・パーソナルドクターサービスの運営 ・法人向け健康経営支援 ・医療相談・健康支援
ホームページ
https://company.wellness.jp/