アクセル全開で急成長の住宅企業!第三者割当増資で目指す新たな挑戦

アクセル全開で急成長の住宅企業!第三者割当増資で目指す新たな挑戦

WITHDOM Group株式会社
代表取締役
南郷 克英氏

家業を継ぐ夢から起業へ - 住宅業界で築いたキャリアと転機

家業を継ぐ夢から起業へ - 住宅業界で築いたキャリアと転機


まずは、南郷社長のご経歴についてお聞かせいただけますか。

私は鹿児島の出身です。高校卒業後は長崎大学の経済学部に進学し、卒業後はハウスメーカーに就職しました。実家では工務店を営んでおり、私は幼いころから住宅に興味を持っていました。そして、いずれは家業を継ぐつもりでいました。ハウスメーカーでの勤務は、営業を学ぶための「腰掛け」のつもりだったんですよ。

ところが、元請けの企業が倒産して仕事が激減してしまい、実家の工務店も廃業を余儀なくされました。私の目論見は外れ、結局15年ほど勤務することになります。

その後、住宅系のコンサルタント会社に転職しました。コンサルとして働けば、多くの経営者と交流できる機会が得られると考えたからです。実際に北は青森から南は鹿児島まで、全国の工務店を回る日々を過ごしました。その経験を経て、別のハウスメーカーへの転職を挟みつつ、2018年に現在の会社を設立しました。
起業の際はこの業界しかないと思い、迷うことなく住宅関連事業を選びました。実家の苦労を間近で見ていた分、起業には周囲から猛反対されましたが、説得してなんとか理解を得られ、今ではとても喜んでくれていますよ。


創業前から現在に至るまで、そんな経緯があったんですね。
迷うことなく選んだこの業界で、現在はどんな事業を展開していますか?

当社は基本的には住宅企業です。福岡市に本社を構え、拠点は今のところ、県内に3箇所、県外では埼玉、千葉、岐阜、神奈川の各県に1箇所ずつ出店しています。従業員数は2024年4月現在、90人規模にまで成長しました。

当社の中核ブランドは、注文住宅を手がける「WITHDOM建築設計」です。フルオーダーの設計が可能で、高気密・高断熱・高耐震構造に加え、全館空調を標準とするなど、機能性と快適性を兼ね備えた住宅を建てています。

そして住宅以外にも、不動産事業・転職エージェント事業・ジョイントベンチャー運営・コンサルタント業務など、事業は多岐にわたりますね。特にコンサルタント事業では、住宅系の工務店に特化してネットマーケティングやブランディングを提供しており、業界内でのニーズに応えています。

人材紹介会社も運営しています。住宅業界って「人材ありき」なんですよ。今は業界全体でプロダクトの品質差が縮小し、以前のような欠陥住宅を売るような企業も減っています。その結果、プロダクトの選択よりも「誰に任せるか」がより重要になっているんです。

人材紹介事業は良質な人材も確保できるので、これが当社の大きな強みにもなっています。

コロナ禍を追い風に「YouTubeチャンネル開設」で顧客との新たな接点を創出

会社の設立から今に至るまでの動きや、ターニングポイントになった出来事はありますか?

2018年に会社を設立すると、手がけた「平屋住宅」が大ヒットして想像以上に多くのご注文をいただきました。2019年には完工件数がわずか8棟だったのが、2024年には約100棟、さらに2025年には200棟を見込んでおり、会社は急成長を遂げています。
その間の2020年には、コロナ禍という逆境に直面しました。イベントなどのリアルな接点がすべて断たれる中、非接触での顧客対応の方法を模索した結果、公式YouTubeチャンネルの開設に至ります。すると大きくバズって100万回以上再生される動画もいくつか生まれ、お問い合わせも急増したんですよ。ちょうどビジネス系動画が流行り始めた頃で、タイミングも良かったのだと思います。

その後、当社の成長に注目した他社から「どうやっているのか」とお問い合わせをいただいたのがきっかけで、住宅会社向けにコンサルタント業も始めました。ネットマーケティングやブランディングのノウハウを共有し、多くの工務店の成長をサポートしています。

全国展開の手法は、注文住宅事業で独立を希望する方々と合弁会社を設立する「ジョイントベンチャー形式」です。これまでに進出した店舗は、弊社が必要資金の約7割を出資するスキームで運営しています。

2025年にはさらに、静岡、鹿児島、長野への進出を計画しています。今までの収益は“全て”新規出店に回していて、まさに「ブレーキが付いていない」状態です。現在4つある子会社も、新たにもう4つ設立する予定で、さらなる飛躍を目指しています。

スモールビジネス脱却へ - 出資の決断

スモールビジネス脱却へ - 出資の決断
資金調達に出資を選んだ理由は何ですか?

今回、事業発展や共同商品開発の推進を目的として、議決権割合14%の第三者割当増資を実施し、先方より4億円の出資をいただきました。この決断の背景には、やはり資金不足という切実な課題があります。

ここ1年ほどでキャッシュフローはようやく改善してきましたが、これまでブレーキを踏むことなく“アクセル全開“で運営してきたので、会社の口座に十分なお金がなかったんですよ。運営資金は主に銀行融資で賄っていて出資も受け入れておらず、会社の規模としてはスモールビジネスの域を脱していませんでした。

当社のメインバンクは地銀で、全国展開のスキームを進める上で、県外進出や新たな別会社設立に伴う融資には消極的でした。進出先の地銀は逆に、福岡に本社を置く企業という点で厳しい姿勢でしたね。メガバンクにも打診しましたが、同じく断られてしまいました。

こうした状況から「これはもう出資しかない」と思ったんです。ただし、マジョリティ出資は避けたかったので、マイノリティ出資を前提に話を進めることにしました。

今回いただいた4億円の出資は、いわば「呼び水」の役割を果たします。この資金によって、会社のBS(バランスシート)は大きく改善されるからです。一方で、PL(プロフィット・アンド・ロス)には絶対的な自信があり、毎年しっかりと収益を上げられます。

つまり、BSとPLが万全な状態であれば、メガバンクも門戸を開いてくれるのではと考えたんです。今後の展開次第ですが、すでにメガバンク担当者との面談はセッティングできました。

今回のような形式での資金調達の経験を持つ者は誰もおらず、出資比率や条件面については、双方で何度も二転三転する場面がありました。お互いに譲れないポイントも多く、せめぎ合いが続きましたが、結果としては大きなトラブルもなく、スムーズに進められましたね。


今回のような形式での資金調達の経験を持つ者は誰もおらず、初めて尽くしのプロセスだったんですね。そんな今回の増資で、最も重視したことは何でしょうか?

今回の資金調達において、最も重視したのは「自分の会社であり続ける」という点です。先方からは「出資するのであればマジョリティを取りたい」という強い意思が、ひしひしと伝わってきました。それ自体は当然の考え方だと思います。

しかし、マジョリティを譲ると、もはや自分の会社ではなくなってしまいます。今はまだ、私自身がこの事業に込めてきた思いや、社員と築いてきた会社の文化をしっかりと残していきたいという思いがあったので、この一点だけはどうしても譲れない条件でした。

結果的に、先方には我々の意思を尊重していただき、マイナー出資の形で合意できました。議決権割合が確定したので、より前向きに話を進められるようになりましたね。これは大きな成果だと思います。


第三者からの出資で、気になっていた点や懸念はありましたか?

今回の交渉において最大の懸念点は「話がご破算になること」でした。

実は、今回の資金調達と同時に、静岡でジョイントベンチャーによる出店を計画していました。しかし、資金不足のためにプロジェクトを一時停止せざるを得ず、相手方にも「もう少し待ってほしい」とお願いしていたところだったんです。

今回の話がまとまらなければ、このプロジェクトが立ち消えになりかねない状況でした。幸い、スムーズに出資の合意に至ったおかげで、新店舗は予定通り2025年1月に無事オープンする運びとなり、ホッとしています。


あらゆる企業の中から出資企業として「日創プロニティ株式会社」を選んだ理由や、縁を感じたきっかけ何だったのでしょうか?

日創プロニティ株式会社の石田社長と大里専務のお二方は、非常にエネルギッシュで「ギラギラしている」という表現がぴったりの方々でした。いわゆる上場企業の経営者に抱きがちな堅苦しいイメージとは全く違って、むしろ親しみやすさすら感じたんです。これまでにも交渉の過程で何人かの上場企業の経営者にお会いしてきましたが、日創プロニティさんのような方々は初めてでしたね。初対面から、とても人情味にあふれるお二人でした。

ちなみに当社の取引先には、おしゃれなキッチンや洗面台を手掛けるミラタップさんという会社さんがいらっしゃるんですが、実際に下請けでモノづくりしているのは日創プロニティさんなんですよ。その点にも、どこかご縁を感じました。


「日創プロニティ」と交渉をしていく中で、最終的な決断の決め手となったポイントは何でしたか?

交渉の中で日創プロニティさん側が突然、条件を譲歩してくださったんです。本当に驚きましたが、これが決断の決め手となりました。

先方は当初、高めの出資比率を主張されていました。ところが、何回目かの交渉において、突然「14%」という条件を提示されたんです。すぐに歩み寄って握手しました。先方の担当者が、その条件変更を淡々と説明されていたのが印象的でしたね。もうその場ではドーパミンが一気に出た感じで(笑)。「これで話が進む」と強く感じた瞬間でした。
その後の交渉では少々難しい場面もあったんですが、こちらも覚悟を決めて、自分たちが譲れない一線については安次嶺さんを通じてしっかりと主張しました。最終的には、先方の取締役にも仲介役として入っていただき、双方が納得できる形で話がまとまりました。

資金調達を機に“攻め”から“整える”へ - 会社の体制強化と意識の変化

資金調達を機に“攻め”から“整える”へ - 会社の体制強化と意識の変化
第三者割当増資を終えられた時、どんなお気持ちでしたか?

これまで「ノーブレーキ」で突き進んできた当社ですが、今回の資金調達を通じて、少し「大人っぽい会社」に変わっていけるのではないかと感じました。

経営者が「買収監査」をネガティブに捉え、それが原因でM&Aなどが破談になるケースもあると伺いました。ただ、我々はむしろ「課題が浮き彫りになる」あるいは「今後の対策を立てやすくなる」といった大きなメリットを感じたので、積極的に受け入れたんですよ。

我々はさらに大きくなりたいという思いがありますし、先方は一歩先を行く企業です。だからこそ、彼らが仰るアドバイスには価値があると思うんです。例えば、取締役会にオブザーバーとして出席された日創プロニティの石田社長からは「実務執行者と監査役は絶対に分けないといけない」とご助言いただきました。社外から人材を招聘して「社長の目」として機能させるべきだというご提案です。

そこで、顧問弁護士や監査役を新たに迎え入れ、会社の体制が整い始めています。これまではアクセルを踏み続けるような経営スタイルでしたが、何かの拍子で大きな問題を引き起こしてしまうリスクも感じていました。買収監査によって、その漠然とした不安を解消できたと思います。

特に監査役については、石田社長の推薦で銀行出身者の方にご参画いただきました。会社としての信頼性やガバナンスが一層強化され、今後の成長に向けた万全の体制が整いつつありますね。

出資を力に、大きなビジョンへ挑み続ける会社に

今後の会社の展望について、どのようにお考えですか。

今回出資いただいた4億円については、すべて投資に回しました。その結果、すでに底が尽きかけています。ノーブレーキなのは相変わらずで(笑)。もちろん、売上拡大の自信はあります。

最近、社員たちの前で「売上を5年で10倍にする」と宣言しました。つまり、年間の施工件数を現在の約100棟から1,000棟に引き上げるという計画です。この時点では社員全員が前のめりで聞いてくれていましたが、さらに「その先の5年後には、1万棟にする」と畳み掛けると、さすがにその場がざわつきましたね。

日本で年間1万棟を手掛けるハウスメーカーは、わずか数社です。我々もそこに入るのだと伝えたのですが、驚きと引き気味の反応が入り混じっていました。

社員からは「今の規模で十分なのでは?なぜさらに高みを目指すんですか」と聞かれることもあります。そんな時は「高い山を目指していく途中で脚力がつく。その脚力を得た自分を見てみたくないか?登ったら、その理由が分かるよ」と答えるようにしているんですよ。

私は「社長とは、社員が驚き引くほどの大きなビジョンを掲げる存在であるべき」と考えています。会社の成長は、社長がどれだけ大きな絵を描いているかに懸かっているからです。絵が大きければ大きいほど、それに惹かれて多くの人が集まってきますから。

これからも常に高い目標を掲げ、挑戦し続ける会社でありたいと思っています。


本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。最後にM&Aや第三者割当増資を検討されている経営者様に、アドバイスをいただけますか?

今回の交渉は上場企業からのマイノリティ出資を受けるというものでしたが、その過程でいただいた数々のアドバイスは、我々にとって非常に有益でした。特に中小企業の場合、上場企業からの出資は単に資金提供だけでなく、起業の体制を強化して成長を促すことにもつながります。

上場基準のルールは確かに厳しく、堅苦しく見える部分もあります。しかし、これらの基準は今までに蓄積された失敗の経験から生まれたものであり、非常に合理的です。そのルールに基づいて戦えば、中小企業でも確実に強くなれると思います。

一般的に、中小企業はオーナーのリーダーシップに依存しているケースが多いです。しかし、その体制を上場基準のルールに沿って整えれば、オーナーがいなくなった後も会社が自律的に回り続ける仕組みを作れます。

M&Aや外部からの出資に不安を感じる方も多いと思いますが、我々は今回の経験を通じて自社の体制を見直し、強化できました。もし検討されるのであれば、経営者の方には、会社の未来を見据えた選択肢として、ぜひ前向きに取り組んでいただければと思います。

COMPANY INFO会社情報

企業名
WITHDOM Group株式会社
代表者
南郷 克英
所在地
福岡市博多区博多駅東1丁目18-25-1F
設立
2018年
事業内容
住宅設計・施工、リフォーム、不動産
ホームページ
https://withdom-group.jp/