親の事業を手放し、自分の道を切り開く。M&A後の新しい挑戦。

親の事業を手放し、自分の道を切り開く。M&A後の新しい挑戦。

MBS株式会社
元 代表取締役
益田 詩歩氏

野球にかけた青春時代。念願かなって女子プロ選手としても活躍する

野球にかけた青春時代。念願かなって女子プロ選手としても活躍する


2012年大阪ブレイビーハニーズ所属の頃の益田氏


9歳から野球をされていたと伺いましたが、どんな少女時代だったんですか?

野球をやると決めてからは、少女というよりは男の子のような過ごし方をしていましたね。
女子のように振る舞っていると、どうしても手加減されてしまうことがありましたから。そうなると自分が強くなれないので、気を遣わせないよう女ぶらずに過ごしていたんです。
また、意外かもしれませんが、野球以外の時間は家で勉強や読書をしていました。自分で言うのも変ですが、根は真面目なんだと思います。


真面目じゃないと、今のお立場にはおられないと思いますよ。

そうですね。人からの助言に対して、一度は自分の中に落とし込んで考えるという素直さもあったと思います。ただ、アドバイスを参考にする相手は自分で選んでいましたね。
今回M&Aベストパートナーズ(以下MABP)さんにお世話になったM&Aの際も、実はメンターがついていて、アラン・シュノア氏という方なんですが、そちらに意見を仰いでいました。
実は、数社の中から西山アドバイザーにM&Aを任せるという選択をしたのも、アランのアドバイスがあったからです。



今回のMABPとのご縁は、アラン氏のおかげだったんですね。彼とは、どちらでお知り合いになられたのでしょうか?

渡米してから現地で不動産仲介の免許を取って、日本人の機関投資家を顧客として働いていたんです。その際「商業不動産投資家の会」に入ったことで彼と知り合いました。
アラン氏は、これまでニューヨークのウォール・ストリートでブローカー業に携わるなど、数々のビジネスを手掛けており、現在は不動産投資を営んでいます。投資の見方やディールの交渉などはM&Aと非常によく似ていますから、相談に乗ってもらいました。
今では、メンターとしてだけでなく、人生のパートナーとしてもお世話になっています。


元プロ野球選手という経歴をお持ちですが、20歳で入団されたんですよね。

そうです。2010年、ちょうど日本女子プロ野球機構が発足した年でした。
それまで女子にはプロ野球というものがなく、プロになる夢を諦めてプロゴルファーへの転向を準備していたところだったんです。でも、そのタイミングで女子リーグが創設されたので「これでプロになれる!」と飛び込みました。
やっぱり野球が好きだったんですよ。特に「プロ」になることは子どものころからの夢だったので。トライアウトに合格してプロ入りし、2013年までプレーを続けました。


念願のプロ選手になってみて、どうでしたか?

夢だったので、やってよかったとは思っています。ただ、女子スポーツの限界が見えてしまったんですよね。実は、女子スポーツをビジネスにするのは非常に難しいんです。
人がスポーツを観に行く理由って、エキサイトしたり興奮したりするためなんですよね。だから迫力のある男子スポーツに人気が集まるんです。一方で、女子スポーツを見る目的って「格好いい」「綺麗」「可愛い」とか、美しい動作を見るためだったりします。

多分、女子スポーツでしっかりビジネスになっているのはゴルフ、テニス、フィギュアスケートくらいでしょう。女子野球はプロの興行としては難しく、チケットを売るのも大変でした。実際に2024年現在、女子プロ野球は休眠状態ですから。
私は野球を趣味としてプレーしたいわけではないので、ビジネスにならない以上は続ける意味がないと考えたんですよ。

「楽しいだけでいいの?」という自問自答があって、お金が儲からないのにただ夢を追い続けていいのかと悩みました。最終的には、ビジネスとしてお金を稼げて張り合いもある、別の何かをしたいと思ったんです。

引退後に勃発したトラブルを解決後、M&Aを経て自分の人生に踏み出す

引退後に勃発したトラブルを解決後、M&Aを経て自分の人生に踏み出す
写真左:益田氏のM&Aを担当した西山アドバイザー


その後は社長であるお父様が亡くなってしまい、社内のNo.2の方と7年間ほどトラブルになっていましたが。

そうですね。私が野球を辞めた後、社長だった父が亡くなりました。
そこから、会社の継承権を巡ってNo.2との戦いが始まったわけなんですが、まぁ、戦いだと思っていたのは私だけだったのかもしれません。相手からすれば、ビジネスを知らない子どもに見えていたでしょうし、7年後に経営権が私に戻るなんて夢にも思っていなかったと思います。
もし、相手が本気でこちらを警戒していたら、もっと上手く立ち回っていたでしょうから。一人勝ちだと、甘く見ていたのかもしれませんね。


その間、2017年からアメリカに渡って、ビジネスを学ばれているんですよね。

そうです。そして2023年に一度、日本に戻ってきました。
長い勉強時間でしたが、30年間も経済が停滞していた日本とは違って、アメリカのビジネス環境はまさに異次元で、学ぶことがとても多くありましたね。

メンターのアランは、2001年から不動産投資を手掛けています。彼の事業は、中古物件を安く購入してリフォームし、その価値を上げて転売して利ざやを得るビジネスです。これって、M&Aともよく似ているんですよ。
彼は商業不動産も含めて、これまでに何百件もの物件に投資してきました。現在は、11億円で購入した物件に3~4億円ほど追加投資し、最終的に21億円で売却するというプランを2年がかりで進めています。アメリカのビジネスは、スケールが違いますね。


見事アメリカで学ばれたことを活かしながら、結果的にNo.2の方から会社を取り戻して、さらに自分の人生を歩むためにM&Aされたんですよね。

そうなんです。私は3代目として生まれたので、どうしても「父の会社を継ぐのが自分の人生だ」と思い込んでいました。親に貢献するというストーリーを勝手に作り、その考え方に基づいて行動してしまっていたんです。

でも、ビジネスのプロであるアランに「あなたのスキルが活かせるビジネスは、それではない」と指摘されて、初めて別の視点から考えられるようになりました。
一方で、自分が生まれた時からあるもの、つまり親の事業に生かされていた事実もあって、それが無くなるのは非常に怖いことだと感じていたんです。今までの居場所を失う感覚で、自分が生まれ育った実家を売り飛ばすような気持ちだったんですね。

ただ私は、親の人生と自分の人生は別物だということに気付けました。他の後継者の方にとっても、これはかなり難しい判断ですが、避けては通れないポイントだと思います。


それで今は、アラン氏のライフパートナーでありながら、ビジネスパートナーとしても、一緒に事業を進めているんですよね。


そうですね、ただ、アランはビジネスパーソンとしてのレベルが非常に高く、パートナーというよりは先生と生徒といった関係に近いかもしれません。
今、手掛けている物件は、カリフォルニア州のニューポート・ビーチという、アメリカでも有数の不動産価格が高い地域にあります。富裕層が多く住むエリアで、別世界のような場所です。

もともと、アメリカの不動産に投資する日本の方にコンサルティングしていた経験があり、コミュニケーション力や物怖じせず人前に出る意欲を買われたのかなと思います。今は新しい分野なので勉強しながら、広報担当としても活動しています。今後も、カリフォルニア州やテキサス州を中心に、さまざまな場所でビジネスに取り組んでいく予定です。

自分でデザインした人生を歩みつつ、公私ともに最も大切な「自分の幸せ」を追求していく

自分でデザインした人生を歩みつつ、公私ともに最も大切な「自分の幸せ」を追求していく
プライベートの様子も、ぜひお聞かせいただけますか。

ビジネスの話ばかりしてしまいましたが、一番大事なのは「自分の幸せ」だと思います。やりたいことをやる、好きな人と一緒にいること、それが何よりも大切ですね。

私は、親が築いたビジネスに対する執着を捨てて、自分が本当に楽しいと感じられることに人生をシフトしました。今の仕事も、アランと一緒にいることも楽しいですし、ビジネスの話も好きです。ただ、決してお金が全てではなく「好きでやっている」という感覚ですね。


お話を伺って、とてもカッコいい生き方をされていると感じました。もちろん、裏には並々ならぬ努力があったのだと思いますが。

ありがとうございます。自分の人生を生きたくても生きられない方が多い中で、私もアランも、共に生き方をデザインできていると思います。
きちんと責任を果たしながら、やりたいことをやり、やりたくないことはやらないという選択ができている点は、とても幸せなことだと感じています。


やはり、すごい人生だと思います。今までのご自身を支えてきた価値観を教えていただけますか。

一言で表すなら「自分ができると思うからできる」ということです。
私は「できない」とは決して言いません。自分でやると決めたら、できるまで方法を探して、ひたすら練習する。だから「できないわけがない」と思って取り組んでいます。
「毎日成長したい」という考え方は、アランとも共通していますね。

学校の勉強はテストがあって終わりがありますが、ビジネスには終わりがなく、私たちもそんな固定観念は持っていません。自分が興味のあることはとことんやりますし、幸せのためにどうしたら良いのかも徹底的に追求します。
例えば、ジャンクフードを避けて良いものを食べる、ジムやヨガに通うなど、毎日の小さな選択を変えていくことも大事です。ビジネスも恋愛も、常に学ぶ姿勢を持ち続けながら、人生を歩んでいると自負しています。緩急はつけていますけどね。


貴重なお話をありがとうございました。最後に、今後のビジョンや目標をお聞かせください。

アランの大型プロジェクトは本当に大きな経験となりましたので、これからも2軒目、3軒目と関わっていきたいと思っています。また、今まではSNSなどには手を出していなかったのですが、今後は広報担当としてその分野にも挑戦していく予定です。

アランはこれまで一人で事業を運営していて、本当に忙しそうだったんですよ。
これからは私もパートナーとしてサポートし、ビジネスの成長に貢献できるよう努めていきたいですね。

COMPANY INFO会社情報

企業名
MBS株式会社
所在地
〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目20番12号 DK赤坂
設立
1999年6月
事業内容
貿易事務人材派遣事業、メッセンジャー事業
ホームページ
https://www.m-bs.jp/