タレントと企業をつなぐ。芸能界も広告業界も見てきたからこその立ち位置確立へ

タレントと企業をつなぐ。芸能界も広告業界も見てきたからこその立ち位置確立へ

株式会社タレントリスト
代表取締役
山中 もとお氏

夢を追いかける:大学中退から放送作家、さらに広告代理店への道

まず、山中氏の学生時代の経験やお仕事の経歴など、これまでのことを簡単に教えてください。

高校を卒業してからは理系の大学に所に通っていましたが、途中で実習などが苦痛と感じはじめ、中退しました。その頃から、放送作家を目指すようになった記憶があります。

放送作家になってからは、まずソニーミュージックアーティスツ(SMA)という会社で放送作家をしていたので、その繋がりから芸能関連の仕事に携わるようになりました。


ありがとうございます。大学を中退されて放送作家を志していた頃は、どのような生活を送られていたのでしょうか?

はじめに日本テレビで開催された放送作家塾のオーディション(放送作家トキワ荘)に挑戦しましたが、残念ながら落選しました。しかしこの経験が、逆に放送作家を目指す気持ちを強くしたと思っています。その後、吉本興業の作家の見習いを1年間行い、その後ソニーミュージックアーティスツで活動したことで、多くの経験を積むことができました。

その間、コウメ太夫さんなど芸能人との出会いもあり、これが後に繋がることになるのかもしれません。本格的に放送作家として活動を始めたのはその後ですが、約2年間は生活が不安定でしたね。

多くの放送作家がフリーランスで活動している中、23歳でフリーランスになるのは早すぎると感じたため、正社員として働くことにしました。広告代理店「株式会社フルスピード」に入社したのですが、タイミングがよく、入社1年後には東証マザーズ(現グロース市場)に上場しました。
(※株式会社フルスピードはその後2020年に上場廃止)

当時、ネット広告ブームの時代で競合他社ではサイバーエージェントやオプト(現デジタルホールディングス)、セプテーニ、アイレップ(現デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム) などの会社が活躍している中、私はフルスピードでSEOやリスティング広告の営業と運用を担当しました。人手が少なかったこともあり、入社して3ヶ月でマネージャーに昇格して、さらに2年後には営業セクションの部長になるなど、この頃のキャリアアップはかなり早かったですね。


たしかに放送業界ではフリーランスが主流であると聞きます。ただフリーランス以外にも、芸能プロダクションに所属する道がありますよね。プロダクションに所属した後は、どのようなキャリアパスが考えられるのでしょうか?

芸能プロダクションに所属していても、あくまで個人事業主となるので、正社員というわけではないですね。先輩から仕事を振ってもらうこともありますが、私の場合はキャラクター的に先輩と癒着するのが向いていないと感じていたので、あまりそういう機会はなかったですね。なので、結果で評価されるWeb広告代理店の方が自分自身には向いているなと感じました。

フルスピードには2006年に入社しましたが、2009年に退職しました。その後、当時クライアントの担当者さんが広告代理店として独立を検討しており、会社を立ち上げ、東京と札幌に拠点を設けました。そのタイミングで札幌支社の支社長として2009年に札幌に移りましたが、こちらも2014年3月には退職しています。

ただ北海道での生活が気に入り、札幌に残ることになって、現在も本拠地を北海道においています。もちろん必要に応じて東京で仕事をすることもあるので、定期的に東京にはきていますね。

芸能界への参入:クライアントとプロダクションの間で揺れる苦労

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次に、株式会社タレントリストについてお聞きしたいです。この会社を創業するに至った経緯や背景について、具体的に教えていただけますか?

タレントリストは、私が経営するWebコンサル会社である株式会社マジメの一部門として存在していました。この部門では芸能人のキャスティング、動画制作、Webコンテンツ制作、ライターさん、漫画家さんのアサインなどを行っていたんです。しかし次第に芸能関連の業務が増加してきたため、分社化することが適切だと判断し、2020年に分社化を実施しました。

分社化の直後にコロナウイルスが発生し、困惑しましたが、Webコミック制作や声優さんの仕事など、新しい分野に事業の焦点を移すことができたので、結果論としては良かったかなと思います。今振り返ると、この変化が良い結果をもたらしたと感じています。

ただ私たちが芸能界に挑戦する際、ソニーミュージックアーティスツ(SMA)以外での実績がほとんどなかったことが大きな苦労の原因でしたね。無名の会社が名立たるプロダクションに認められるまでには、高い壁が存在し、時間が必要でした。これは芸能界に限らず、一般のビジネスマンにも共通する課題です。中には長期的な視点で対応してくれる人もいますが、短期的な利益を追求する人も少なくありません。

テレビ業界の衰退と予算の縮小により、大手プロダクションもYouTubeなどの新しいプラットフォームでの仕事を受けるようになってきていますが、この変化は私たちにとってプラスで、仕事はやりやすくなってきています。私たちの理念は、大手代理店を通さない、予算の限られたクライアントにも芸能人を使ったプロモーションを提供することです。

しかし実際には、大手代理店とすでに取引のある会社からの依頼が増えており、クライアントがタレント利用の予算を理解していないために、説明すると「高い」と捉えられてしまうことが多いですね。このような温度感のギャップを埋めるのは、特に新規のクライアントであればあるほど大変ですが、私たちのサービスを理解して、予算に見合ったタレントを利用したいと考えるクライアントも存在します。


山中氏がこの業界で仕事を行う上で大切だと感じていることについて、教えていただけますか?

私たちの業界では、人と人との繋がりが非常に重要であり、これが会社としての実績にも直結します。クライアント間で築かれた関係が、新たなビジネスチャンスを生み出すことも少なくありません。理想的なのは、クライアント自身にこのような関係値構築を大切にしてもらうことです。

しかし予算を持つ側にはさまざまな考えがあるため、関係や状況が複雑になることも多々あります。その結果、多くの関係者とのつながりを持ちながらも、プロジェクトの進め方に迷うクライアントが出てきてしまうんです。これは非常にもったいないことであり、業界における大きな問題点だと感じています。

やりがいを感じる瞬間:クライアントとプロダクションの間に、キャスティング会社が存在する意味

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山中氏が現在の仕事にどんなやりがいを感じているかも、ぜひ教えてください。

これまでプロダクションの担当者は大手代理店や出版社、TV局などを中心に営業していましたが、これからの時代は独自のコンテンツ制作を視野にいれつつ、当社のようなYouTubeなどを制作している制作会社との取引も必要だと感じています。

そういった場合に理解を示してくれるプロダクションやクライアントさんと出会えた時は非常に嬉しいですね。

芸能プロダクションの仕事は、本質的にはタレントの保護と管理ですが、彼らが完全に自立しようとすると、おそらく壁に直面するでしょう。そのため番組や広告制作の場面では、しばしばキャスティング権を持つプロデューサーの意向が優先されます。そうすると、タレント側に一方的な不安や不満が溜まりかねません。


そうした不安や不満が伴う中、山中氏はどのように仕事と向き合っていますか?

ビジネスは常に妥協の連続です。完全にお互いが100%納得することはまずありません。今回譲歩することで、次回の取引のための関係を築くといった戦略を取ることがあります。多くの人は目先の利益だけに目が行きがちですが、損をして得を取る戦略を考え、将来的に良い結果を目指す人もいます。私は後者のような長期的な視野を持つタイプです。

私はビジネスを、貸し借りの連続だと考えています。時には無理を言うこともありますが、それもビジネスの一環です。

仕事の本質は、バランスを取ることにあります。そこで、我々のような制作会社が必要なんです。

一人一人が輝く:個性を活かした役割分担で、さらなる事業拡大を図る

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山中氏が従業員に対して持っている思いを教えていただけますか? 特に社員に対するサポートや、職場環境の重要性についてどのようにお考えでしょうか?

私たちは1年に1度に社員総会を開催しており、そのたびに社員の自立を促しています。私自身は「誰にでもなれる」という自覚を持っていますが、個々の社員もそれぞれ異なるキャラクターを持っています。そのため単純に仕事のできる、できないで評価するのではなく、各自の得意分野を伸ばすことに重点を置いています。

私たちの会社は、一般的な会社のように全員が同じ仕事をして同じ目標を追うわけではありません。役割分担が全く異なるため、それぞれの得意分野を活かすことが重要です。これにより、各自が最大限のパフォーマンスを発揮できるようにサポートしています。


山中氏の会社の将来の展望や希望についても具体的に教えていただけますか? たとえば会社をどのように発展させたいか、新しい事業分野に興味があるかなど、ぜひ伺いたいです。

現在に至るまで、さまざまなプロジェクトを進行し、分社化を経て成長してきました。それでも周囲の企業と比べると、まだ小規模だと感じています。これからも会社を可能な範囲で成長させていくつもりです。ただし自社のサービスやチャンネルがまだ十分ではないため、その点の改善も図っていきたいです。

最近はライブハウスの経営にも興味を持ち、具体的に動き始めています。3月27日に当社の10周年イベントも実施しましたが、その一環として、様々な関係先と話している中で都内の渋谷、新宿、池袋など、ライブハウスが不足しているということが話題に上がっていました。それを踏まえても、先述の地域で事業展開を進めていけたらと考えています。まだまだライブハウスへの参入チャンスがあると考えており、この分野での成功が芸能界内での地位を高めることにもつながると感じています。私自身の性格上、プロダクションの運営は向いていないと自覚しているほか、不動産は好きなのでそういう面でもライブハウス業界が自分にとって適していると思っていますね。

もちろんライブハウス事業には多くの課題もありますが、やらないで後悔するより、やって後悔したほうがいいと常々思っているので、これからも挑戦を続けていきたいと思います。

COMPANY INFO会社情報

企業名
株式会社タレントリスト
代表者
山中 もとお
所在地
〒160-0022 東京都新宿区新宿1丁目11−3
設立
2020年
事業内容
コンテンツマーケティング
ホームページ
https://talentlist.jp/