16歳で描いた、25歳までのキャリア設計
本日はありがとうございます。まずは、これまでのご経歴からお聞かせください。
明治大学出身です。入学当初から、将来の進路を「税理士になるか、証券営業の道に進むか」の二択に絞っていました。最初は税理士を目指して資格試験の勉強に取り組んでいたのですが、なかなか手応えを感じられなくて。それなら証券営業の道に進もうと考え、就職活動を始めました。
両親が自営業を営んでおり、顧問の税理士の先生も身近な存在だったことから、以前より「お金にまつわる仕事」で身を立てたいと考えていました。さらに、16歳の頃には「25歳までに年収1,000万円を必ず達成する」という目標も決めていたんです。そこから逆算すると、就職先は証券会社一択でした。当時は時流にも恵まれ、面接にも比較的自信があったので、就職活動で苦労した記憶はあまりありませんね。
大和証券に入社してからは、テレアポや飛び込み営業を通じてお客様との関係を築き、投資信託などをご提案していました。仕事の目的は明確で、お客様からお預かりする資産を少しでも増やすこと。そのために、ひたすら行動量を積み重ねる日々でした。
当時、社内には表彰制度がありました。仕事を続けるうちに、成果を上げることだけでなく、「社内で評価され続けたい」という思いも次第に強くなっていきましたね。
後輩の一言が開いた、新たなキャリア

そこから2012年には、ファイナンシャルスタンダード株式会社(以下、FS社)へ参画されています。参画に至った経緯と、当時感じた魅力について教えてください。
証券会社で数年間勤務した後、2010年からの2年間はプルデンシャル生命保険に在籍していました。FS社に参画したのは、創業から半年ほどが経ったタイミングです。きっかけは、証券会社時代の後輩から「証券と保険の両方を扱える会社を立ち上げたので、一緒にやってほしい」と声をかけてもらったことでした。
FS社の代表は、証券会社時代から、非常に優秀な人物だと感じていました。純粋に「彼と一緒に仕事ができたら面白そうだ」と感じたことが、参画を決めた大きな理由です。私自身、証券と保険の両方を経験し、双方の知識を生かしてお客様を支援することの価値を、ちょうど実感し始めていた時期でもありました。
IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)という業態そのものよりも、特定の商品や分野に偏ることなく、さまざまな相談に中立的な立場で向き合える。その点に大きな可能性と魅力を感じ、FS社への参画を決めました。
お客様と約20年向き合い続ける「覚悟」
証券会社からFS社へ移ったことで、仕事に対する考え方や価値観に、どのような変化がありましたか。
一番大きかったのは、「転勤がない」ということです。一般的な金融機関では、3~4年に一度の頻度で転勤があります。そのため、目の前のお客様にどれだけ提案を重ねても、その後どのような成果につながり、10年後、20年後にどう喜んでいただけたのかを、自分自身で見届けることができません。これは、金融機関の仕組み上、避けることが難しい課題だと感じていました。
FS社では、基本的に担当者が変わりません。なかには、大和証券へ入社した当初からお世話になっている方もいて、かれこれ20年近いお付き合いになります。一人のお客様とこれほど長く向き合い、支援を続けられる仕事は、なかなかありません。転勤のある金融機関では、実現することが難しかったと思います。
仕事に対する意識がどう変わったかと問われれば、「一人のお客様を、同じ担当者として長期にわたって支え続ける覚悟を持つようになった」ということですね。金融機関に在籍していた頃とは、責任の重さも、仕事への向き合い方も大きく変わりました。
周囲の金融機関出身者も、転勤によって、それまで築いてきたお客様との関係を何度も手放してきた経験があります。だからこそ、「一人のお客様に長く寄り添い、人生に伴走したい」という思いを持つ人が多いのだと思います。
営業の先に見つけた「問題解決」という役割

長くお客様と関わるうえで、大切にされてきた考えや姿勢を教えてください。
正直に言うと、特別に「これだけは意識しよう」と決めていたことは、あまりないんです。長くお付き合いすることを前提にお客様と向き合えば、目先の成果を優先した提案や、情報収集を怠るような行動は自然と選ばなくなります。お客様にとって何が最善なのかを考え続けることが、長い関係を築くうえでの前提になっていました。
私は2年ほど前にフロント業務から退きましたが、当時を振り返ると、「営業する」というよりも「お客様が抱える問題を解決する」という感覚に近かったですね。当初は、こちらからお客様のもとへ出向いて提案する営業スタイルでしたが、次第に、お客様から相談を持ちかけていただくことが仕事の起点になっていきました。
商品を売る営業というより、さまざまな相談に応じる「先生」に近い立ち位置だったと思います。お客様から信頼して相談していただける以上、期待に応えられるだけの知識や準備が欠かせません。だからこそ、お客様の問題をきちんと解決できるよう、事前準備を徹底することを大切にしてきました。この考えは周囲にも繰り返し伝えてきましたし、準備を個人の努力だけに任せるのではなく、組織として質の高い提案を生み出せる仕組みを設計することにも、強くこだわってきました。
提案の質と人材を育てる「カンファレンス」
世の中には多くの資産運用会社がありますが、ご自身は、どのような点にこだわってこられましたか。
大きく2つあります。1つ目は、幅広い相談に対応し、必要に応じて各分野の専門家の知見を取り入れられる体制づくりです。
例えば不動産会社に相談しても、不動産鑑定士本人が直接対応してくれるケースは、決して多くありません。そこで私は、不動産だけでなく、保険や税務などの専門家とも連携し、お客様が抱えるさまざまな課題に対応できる体制づくりに携わってきました。
不動産鑑定士は、ビルやオフィスタワーをはじめとする不動産の価値を評価する、高度な専門知識を持つ存在です。そうした専門家がお客様の相談に直接応じたり、連携する税理士の先生を専門的な立場から支援したりできることには、非常に大きな付加価値があると考えています。
2つ目は、提案の質を担保する仕組みです。そのために大切にしてきたのが、「カンファレンス」と呼ぶチームでの議論です。お客様一人ひとりへの提案内容は、必ずチームで検討した上で提示する。この工程に例外を設けないことを徹底してきました。
その原点には、金融機関に勤めていた頃から抱いていた強い違和感があります。銀行や証券会社に相談すれば、プロとして質の高い提案をしてくれると思われがちです。しかし、1年目と20年目の担当者では、知識や経験に大きな差があり、提案の質にもばらつきが生じます。
だからこそ、お客様から相談をいただいた際には、提案する前に必ずチームで議論する。年間数千件規模の相談に対応していたため、当時は毎朝カンファレンスを行っていました。現在もカンファレンスを通じてチームで議論し、提案の質を高める取り組みを続けています。
この仕組みは、提案の質を担保するだけでなく、人材育成にもつながります。経験の浅いメンバーも、数多くの提案を議論する場に立ち会うことで、さまざまなケースを疑似体験できます。その結果、私の実感では、通常の2~3倍のスピードで知識や経験を蓄えられる。提案の質と人材育成の両方を支える仕組みになったと感じています。
インフレ時代、資産運用は「当たり前」の選択肢へ
改めて、個人・企業を問わず資産運用に目を向けるべき理由を教えてください。また、お客様のニーズに変化はありましたか。
昨今のインフレに尽きるんじゃないでしょうか。これほど分かりやすく物価上昇を実感する時代って、親世代を含めても、おそらく初めてのことなんですよね。もはや「インフレ対策として資産運用を」とあえて説明しなくても、多くの人が「何かしなければ」と感じているはずで、結局はそこに集約されるのではないかと思います。
ニーズの変化ですが、連携先の会計事務所からのご紹介が増えていますね。今までは、こちらから会計事務所に提携を打診していたんですが、最近では、会計事務所側から声をかけていただくケースが多く、この1年で連携先は約3倍近くまで増えました。
これだけ資産運用が当たり前の時代になってきたことで、専門家である税理士の先生方自身が「何かサービスを提供しなければ」と感じ始めているんじゃないでしょうか。NISAの利用者数が拡大していて、資産運用にまつわるサービスを提供する側も、この分野にどんどん興味を持ち、ビジネスとして展開したいという流れになってきているんだと思います。
迎合せず、正しい選択へ導く強さ

これまで、どのような組織づくりを目指してこられたのか、ご自身の思いをお聞かせください。
いい意味で「強い組織にしたい」という思いは、ずっと持っています。「お客様の話をちゃんと聞く」「お客様のご意向を汲む」というのは、コンサルタントとしては確かに大事なことなんですが、私たちの仕事はそれだけでは成立しません。
お客様のご意向が「そもそも正しくなかったらどうするのか」という話です。
例えば「株を買って1年で資産を2倍にしたい」というような、お客様自身の考えが適切ではない場合、私たちはそれをきちんと正さなければなりません。売ることだけを目的にしている営業なら、望まれるままに応じてしまうかもしれませんが、私たちの仕事はそうではありません。
面談の中でこちらの意見もしっかり伝えて、良い意味でお客様のご意向を変えていける「強さ」がないと、私たちの仕事は成立しません。この姿勢は普段から周囲に伝えていますし、私自身も大切にしてきたことの一つですね。
専門家同士の連携が生み出す、新たな価値
今、蒲谷さんご自身が特に力を入れて取り組んでいることを教えてください。
税理士の先生方との提携ですね。私たちだけでサービスを拡大していくことには、一定の限界があると感じているからです。
私たちは「先生」という立ち位置で、お客様に良いアドバイスを提供できているという自負があります。それならば、世の中で実際に「先生」と呼ばれている人たちとタッグを組めば、もっと良い仕事ができるんじゃないかと考えました。
特に税理士の先生は、経営者からすると、お金のことで悩んだら真っ先に相談する相手です。それだけ厚い信頼を寄せられている方からご紹介をいただくことで、私たちの仕事の範囲はすごく大きくなりますし、お客様にとって適切な提案を続けながら、より大きなビジネスにもつなげられます。
全国の税理士の先生方が、自らIFAや資産運用の話をお客様にできるようになったら、本当に日本の経済が変わるくらいのインパクトがあるでしょう。そのため、「一緒に取り組みましょう」という働きかけを、さまざまな方面で続けていますね。
起業を志す人材を、一人でも多く育てたい

最後に、これからどのような人材を育て、どのような組織をつくっていきたいとお考えですか。
先ほど「強い組織をつくりたい」とお話ししましたが、組織の強さを支えるのは、「いつか自分で事業を立ち上げたい」という志を持つ人材がどれだけいるかだと考えています。そうした思いを胸に、主体的に仕事へ向き合う仲間が、一人でも多く増えてほしいですね。
実際に起業のために会社を離れるとなれば、正直、寂しさもあります。それでも、新たな事業を生み出そうと挑戦する人が増えることは、日本経済にとっても大きな意義があるはずです。
起業という選択肢も視野に入れながら、高い志を持って働く人材を、まずは私の周囲から育てていく。そのために、これからも力を注いでいきたいと考えています。